九旬

 

“ごろっと果実”の手作りジャム。木之内農園

生産者: 木之内農園 村上 進さん(むらかみ すすむ)

目次
1 阿蘇の玄関口・立野で育まれる、いちごのおいしさ
2 ゼロから始まった、木之内農園の歩み
3 “塗りづらい”ほど、果実が残るジャム
4 農家だからこそできる、惜しみない果実量
5 余ってしまういちごを、価値ある商品へ
6 震災を乗り越え、再び立野で
7 土作り、作物作り、人づくり

阿蘇の玄関口・立野で育まれる、いちごのおいしさ

熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野。
阿蘇の玄関口とも呼ばれるこの地に、いちご狩りと手作りジャムで知られる「木之内農園」があります。

 

立野は標高約350mに位置し、朝夕は冷え込み、日中は暖かい寒暖差のある地域です。この寒暖差は、いちごの甘みを育むうえで大切な自然条件のひとつ。阿蘇の草原が育む伏流水も、この土地の農業を支えています。

 

南阿蘇の自然に育まれたいちごのおいしさを、もっと多くの人に届けたい。そんな思いから生まれたのが、木之内農園の手作りジャムです。

 

ゼロから始まった、木之内農園の歩み

※中央の白いTシャツの方が、木之内農園 創業者の木之内 均さんです。

 

木之内農園のはじまりは、昭和60年。東京から熊本県阿蘇郡へやって来た一人の若者が、農業を始めたことから物語は始まりました。

 

当時は「新規就農者」という言葉も一般的ではなかった時代。知識も、土地とのつながりも、すべてがゼロからの出発でした。それでも「農業をしたい」という思いを失わず、試行錯誤を重ねる中で、仲間や地域の方々に支えられながら、木之内農園は形づくられていきました。

 

現在、木之内農園の栽培の中心はいちごです。昭和64年には観光いちご狩り園を開園し、平成6年には加工場を建て、ジャムづくりを始めました。

 

農園で育てたいちごを、その場で味わってもらい、さらにジャムという形でも届ける。栽培から加工まで自分たちの手で行うことで、木之内農園ならではの商品づくりが続けられています。

 

“塗りづらい”ほど、果実が残るジャム

木之内農園のジャムを初めて手にした人が驚くのは、その果肉の多さかもしれません。

 

スプーンですくうと、ごろっとした果肉が姿を現します。一般的なジャムは、果実を煮詰めてなめらかなペースト状に仕上げるものが多く、パンに塗りやすい口当たりが特徴です。

 

一方で、木之内農園のジャムは、いちごの形をできるだけ残しながら仕上げています。スプーンですくうと、果肉がごろっと存在感をもって現れる。パンに塗り広げるのはもちろん、ヨーグルトやアイスにのせたり、炭酸に入れたりして、果実そのものを楽しめるジャムです。

 

この果肉感を残すために大切なのが、煮込む際の混ぜ方です。混ぜすぎると果肉が崩れ、混ぜなさすぎると仕上がりにばらつきが出てしまいます。そのため、職人が窯の中の状態を見ながら、果肉の残り方やとろみ具合を判断。人の目と感覚で調整することで、木之内農園ならではの“ごろっとした食感”が生まれています。

 

また、糖度は約50度に設定されており、甘さ控えめ。いちご本来の風味や酸味、果実感を楽しめる仕上がりです。

 

農家だからこそできる、惜しみない果実量

木之内農園のジャムには、自社農園で育てたいちごが使用されています。

 

収穫したいちごは、できるだけ早くヘタを取り、鮮度を保つためにすぐ冷凍。素材の状態を保ちながら、年間を通して安定した品質のジャムづくりにつなげています。保存料や着色料を使わず、素材そのもののおいしさを大切にしているのも特徴です。

 

果実を惜しみなく使えるのは、農家だからこそ。自分たちで育てたいちごだからこそ、一粒一粒の状態を見極めながら、ジャムに合う素材を選ぶことができます。

 

一瓶に詰まっているのは、甘さだけではありません。南阿蘇の自然で育ったいちごの香り。ごろっと残る果肉の食感。そして、農園だからこそ実現できる贅沢な果実量です。

 

余ってしまういちごを、価値ある商品へ

ジャムづくりのきっかけには、農園ならではの課題がありました。

 

木之内農園は観光農園として、いちご狩りを行っています。土日祝日には多くのお客様が訪れますが、平日やシーズン終盤の4月〜5月頃になると、どうしてもいちごが余ってしまうことがありました。

 

大切に育てたいちごを、そのまま廃棄するのはもったいない。「捨てるのではなく、別の形でおいしさを届けたい。」その思いから、ジャムづくりが始まりました。観光農園として、まずはいちごを直接食べてもらう。そして、そのおいしさをジャムとしても届ける。

 

木之内農園のジャムには、農園で生まれた果実を最後まで大切に活かしたいという思いが込められています。

 

震災を乗り越え、再び立野で

※平成28年4月16日未明に発生した熊本地震 当時の様子。

 

木之内農園の歩みを語るうえで、避けて通れない出来事があります。

 

平成28年4月16日未明に発生した熊本地震の本震。農園のある南阿蘇村立野地域は大きな被害を受け、水も道路も寸断されました。いちごハウスは壊滅し、7割の農地を失い、事務所も加工場も倒壊。それは、30年以上積み重ねてきた時間が失われた瞬間でもありました。

 

「もうダメかもしれない」

そう思ったとき、全国から多くのボランティアの方々が駆けつけました。

 

人と人とのつながりの中で生かされている。その支えを受け、木之内農園は「農園を再建する」と再び歩み始めました。

 

土作り、作物作り、人づくり

木之内農園が大切にしている理念に、「土作り、作物作り、人づくり」という言葉があります。

 

良い土を作り、良い作物を育てる。そして、その営みを通して人も育っていく。木之内農園のジャムには、南阿蘇の自然、農園の歩み、大切に育てたいちごを最後まで活かしたいという思いが詰まっています。

 

ごろっと残る果実を口にしたときに感じるのは、いちごのおいしさだけではありません。南阿蘇・立野で積み重ねてきた時間と想いです。木之内農園のジャムは今日も立野から、果実とともに南阿蘇の物語を届けています。

 

大切な方への贈り物にはもちろん、自分へのちょっとしたご褒美にも。木之内農園の“ごろっと果実”のジャムを、ぜひ一度味わってみてください。





基本データ

熊本県阿蘇郡南阿蘇村立野のいちご農園。
木之内農園HP:https://www.kinouchifarm.com/
木之内農園Instagram:https://www.instagram.com/kinouchifarmshop?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=ZDNlZDc0MzIxNw==/