酸味を求める声から生まれた
大分発祥の甘夏で作る今村農園の「蔵姫」
生産者: 今村農園 今村 耕治さん・恵理さん(いまむら こうじ・えり)
目次
| 1 | 海と歴史が息づくまち、杵築 |
| 2 | 「酸味」を求める声から生まれたみかん |
| 3 | 美味しさを引き出すための「手間」 |
| 4 | 穏やかな景色の裏にある、みかんづくりの苦労 |
| 5 | 3,000本を見守る日々 |
| 6 | この土地とともに |
| 7 | 蔵姫をもっと楽しむ |
海と歴史が息づくまち、杵築

大分県杵築市は、穏やかな空気が流れる城下町。
海を望む杵築城もこの土地を象徴する風景のひとつで、歴史の趣と自然のやさしさが静かに寄り添っています。
今回訪れた今村農園の「蔵姫」は、この土地の個性と、生産者の手間ひまによって育まれた一玉です。
「酸味」を求める声から生まれたみかん

今村農園ではこれまで、甘いみかんを中心に育ててきました。そんななか、「酸味のあるみかんが欲しい」というお客様の声をきっかけに誕生したのが、紅甘夏みかんの「蔵姫」です。
大分発祥の甘夏の生産者が減少するなかで、その味わいを残したいという想いも重なり、栽培を始めました。
蔵姫は一玉が大きく、果肉がしっかり詰まっているのが特徴です。
口に含むと、ぷりっとした食感とともに爽やかな酸味が広がります。甘さだけではない、奥行きのある味わいが印象的です。食べ応えがありながら、すっと引いていく後味も魅力です。
美味しさを引き出すための「手間」

美味しいみかんを育てる上で欠かせないのが「摘果作業」です。
実をあえて減らし、栄養を集中させることで、果実の大きさや味を整える過程です。
一般的に、みかん栽培では7月頃の「あら摘果」と収穫前の「仕上げ摘果」など、2回前後に分けて行うことが多いとされます。
今村農園では、摘果を露地栽培で約5回、ハウス栽培では約10回も行っています。
一度に多くの実を落とすのではなく、木の状態を見ながら少しずつ調整することで、適度なストレスを与え、甘みをしっかり引き出すためです。
さらに、収穫の約2週間前にも摘果を行い、栄養を枝先へ集中させることで新芽の発生を促します。
その年の美味しさだけでなく、翌年の実りまで見据えた手間が、今村農園のみかんづくりを支えています。
穏やかな景色の裏にある、みかんづくりの苦労

しかし、その環境は決して甘くありません。
元々田んぼだったという畑は粘土質が強く、水はけが悪いため、みかんの木も十分に根を張ることができません。木が十分に育ちにくく、大きくて美味しい実をつけるには工夫が必要でした。
そこで今村農園では、畑にゆるやかな傾斜をつけ、かまぼこ状に整地することで水はけを改善しました。さらに、肥料には鶏糞や豚糞などの有機肥料を取り入れ、土そのものを育てながら木を支えています。

また、海から吹く風の影響で、みかんの葉や実にかさぶたのような傷が出る「かいよう病」が起こりやすいため、防風林を植えて畑を守っています。病気が広がると木そのものが弱ってしまうこともあるため、風への対策は欠かせません。
一見穏やかに見える景色の裏側で、自然の厳しさに向き合いながら、一本一本のみかんの木を大切に育てています。
3,000本を見守る日々

現在、蔵姫の木だけでも約3,000本を管理しています。
そのすべてを、毎日朝と夕方の2回、今村さん自らの目で見て回ります。
芽の長さや葉の色にわずかな異変があれば、養分不足の可能性を考え、状態に応じた肥料を与えて早めに手を打ちます。
そうした小さな積み重ねが、美味しいみかんづくりを支えています。

台風でハウスのビニールが飛ばされ、鉄骨が曲がって倒れたときは、辞めようかと考えたこともあったといいます。
それでも続けてこられたのは、「この土地やみかんが好きだから」。
その言葉に、今村さんのみかんづくりの原点が詰まっているように感じました。
この土地とともに

今村さんは、「動ける限り、この土地を守り続けたい」と語ります。
日々みかんと向き合い、手をかけ、自然の厳しさを受け止めながら育ててきた、その想いが、今村農園のみかんには込められています。
蔵姫をもっと楽しむ

皮が厚く、やや剥きにくい品種ですが、皮むきカッターなどを使うと手軽に楽しめます。
そのまま食べれば、果肉のぷりっとした食感と爽やかな酸味をしっかり味わえます。
冷凍して食べたり、はちみつをかけてデザート感覚で味わったりするのもおすすめです。皮はジャムにすることで、蔵姫ならではの香りを余すことなく楽しめます。
基本データ
大分県杵築市守江のみかん農園。
今村農園直販サイト:https://kiwaminoaji.shop-pro.jp/
今村農園Instagram:https://www.instagram.com/imamuranouen
