九旬

 

天から授かった一果、天授柿。天草で紡ぐ干し柿の挑戦

生産者: 林 雄介さん(はやし ゆうすけ)

「突然変異の柿」から始まった挑戦

天授柿

九州本土と天草五橋で結ばれた、美しい島々からなる観光地として有名な熊本県天草市。
その地で、渋柿の木に偶然、目を見張るほど大きな果実が実りました。
この突然変異の柿が、天授柿のはじまりです。

この特別な柿を使い、じっくりと干し上げて生まれたのが、干し柿「天授柿」
黒蜜のように濃厚な甘さと、鼻を抜ける爽やかな香りが特徴です。
突然現れたこの柿を前に、「まるで天から授かったようだ」と名付けられました。

 

天授柿

林さんは、その特別な柿に強く惹かれたことをきっかけに、「この柿を地域の特産品として育てていこう」という想いで栽培に取り組んでいます。

一度は「体力的にも厳しく、休みも少ない」現実に農業の世界から遠ざかったこともあったそうです。
しかし年齢を重ねるなかで、少しずつ農業を受け入れていく自分に気づき、「この柿を守り、次につなげたい」という覚悟へと変わっていったと語ります。

 

5年かけてたどり着いた干し柿づくりの技術

天授柿

天授柿の干し柿ができあがるまでには、収穫から加工、そして長期間の乾燥に至るまで、実に多くの手間と時間がかかります。さらに、皮むきから仕上げまでの工程をほとんどすべて手作業で行っています。
この「手間を惜しまない姿勢」こそが、天授柿の味わいと見た目の美しさにつながっています。

 

天授柿

まず、柿の頭とおしりを先に剥き、その後に周りを縦方向に剥いていきます。
大きい柿は横にどんどん膨らんでいくため、干したあとに自然と縦にシワが入るよう、あえて縦方向に皮をむく工夫をしています。

 

天授柿
皮むきした柿は紐にかけた後、約10秒間、熱湯にくぐらせて殺菌します。
この一手間が、安心して食べられる干し柿づくりの土台になっています。

 

天授柿

柿は専用の乾燥室で、約40〜45日間かけてじっくり乾燥させます。
中に入った瞬間、ふわっと柿の甘い香りが広がります。

 

天授柿

乾燥は、干し柿づくりのなかで最も難しい工程だといいます。
業務用の除湿器やクーラーを用いて「高温多湿」を避けつつ、温度と湿度を細かく調整しながら、日々状態を見守ります。
一般的な干し柿では炭酸ガスを使って渋抜きを行うことが多いのですが、天授柿は自然乾燥に任せています。 そのため、原材料は柿のみ。素材の味を生かした、自然のままの味わいが特徴です。

 

天授柿

ただ、完全に放置してしまうと外側ばかり乾燥してしまうため、乾燥の途中で約5回、1つひとつ手で揉む工程を入れています。
そうすることで内部の水分が均一になり、しっとりとした食感と高い糖度を両立した干し柿に仕上がります。

 

天授柿

最後に、干し上がった柿のヘタの部分を手作業でハサミを使って1つずつ丁寧にカットし、干し柿の完成です。

これらの乾燥工程にたどり着くまでには、実に5年の歳月がかかったそうです。
試行錯誤の積み重ねが、今の天授柿の品質を支えています。

 

糖度60度以上の「濃い甘さ」を生む秘訣

天授柿

天授柿の大きな魅力は、なんといっても黒蜜のような濃い甘さです。
一般的な干し柿の糖度が40度前後と言われる中で、天授柿は糖度60度以上に達する、非常に甘味の強い干し柿です。

この甘さを生み出す鍵となっているのが「摘果」という作業です。
育てる実を選定し、木に実りすぎた柿をあえて落とすことで、養分を1つひとつの果実に集中させています。その結果、甘さと大きさを兼ね備えた果実が育ち、美しい干し柿へとつながっていきます。

 

天授柿

また、大きく育つ柿は希少性が高く、最たるものは1000g近くにまで育つ実もあります。
ただ、その分乾燥中に縦割れが起こりやすいため、細やかな管理が必要で、丁寧な見極めと経験が仕上がりを左右します。

 

「パッケージも味の一部」リブランディングへの挑戦

天授柿

商品そのものには自信があった林さんですが、販売においては課題を抱えていました。
「物は良くても、それが見た目に伝わらなければ、手に取ってもらえない」
だからこそ、品質に見合う形で届けたいという思いから、天草在住のデザイナー・江頭さんに依頼し、約2年の時間をかけてパッケージを刷新しました。

 

天授柿

さらに、傷がついたり小さかったりする果実をスライスして乾燥させるチップ製品の試作にも挑戦中です。新しい商品展開に向けた取り組みが進んでいます。

 

お茶漬けにも、お酒のアテにもアマテ農園

おすすめの食べ方は、まず断面をじっくり眺めながら味わうこと。
ぎゅっと詰まった果肉の色艶や、深い橙色のグラデーションが、視覚からもおいしさを伝えてくれます。
サイズが大きく甘みも強いため、一口サイズにカットして味わうのがおすすめです。
渋みのあるお茶と合わせれば、上品な和菓子のように楽しめます。日本酒や焼酎など、お酒との相性も抜群です。

大切な記念日やお祝いの贈り物として、家族みんなで楽しんでいただきたい干し柿です。
「還暦のお祝いに、日本酒とセットにして贈っていただけると嬉しいです」と林さんは笑顔で語ります。 また、女性や若い世代にも食べていただきたいと考えています。

 

天草に新しい産業を。未来への決意

天授柿

「2025年、長年続けてきたたばこ栽培をやめ、一つの大きな区切りを迎えました。
これからは、天授柿づくりを成長産業として育てていきたい」と林さんは話します。

「この地域といえば天授柿だよねと言われる存在になりたい」
「天草の農業の柱になれるように育てていきたい」

そんな希望と覚悟を胸に、林さんは今日も干し柿づくりに向き合っています。
自然が授けてくれた突然変異の柿。天授柿はこれからも、この土地の未来とともに育まれていきます。




基本データ

熊本県天草市の柿農園。 アマテ農園公式HP:https://amate-tenjyu-kaki.studio.site/ アマテ農園Instagram:https://www.instagram.com/amatenouen/